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2004年10月10日「比良 武奈ケ岳」 | ||||||
JR大阪駅AM7.45発の新快速<近江今津行>に乗車して,AM8.33堅田駅で下車。季節がらハイカーや観光客多く,江若バス側の粋な計らいで坊村への直行臨時バスが増発される。運よく予定より早く着く幸先良いスタートとなる。起点となる葛川坊村は安曇川渓谷の上流にあり,四季折々の自然豊かで美しい,その彩に惹かれて訪ねる人は多い。早々に身繕いして出発する。旧道に入り,山の辺料理が評判の比良山荘の前を通り,正面の地主神社で左折して,朱塗りの橋を渡れば葛川明王院に着く。比叡山回峰行の霊場であり伝統ある葛川参籠を伝承し,重文・史料を所蔵する古刹で知られる明王院の前を少し行くと,武奈ケ岳頂上までは約3時間の御殿場コースの登り口である。最初から斜面をジグザグに左に巻きながらの急登である。ぬかるむ登山道は台風・豪雨の影響か倒木多く,樹枝・木の葉・山果が落ちている。早朝から曇り模様,谷間から吹き上がる秋冷が汗ばむ身体に妙に心地良く,快適な登りで高度を稼ぐ。近くで「ギイーギイー」とコゲラの歓迎の鳴声。杉・ナラ・クヌギ林を抜けて植生がツツジ・カエデ類の灌木帯に入り,開けた場所で一息入れる。一時なだらかな登りが続くが,再度左巻き急登になりコブを越えたころ,樹間に陽射しが入る。(左)坊村2km―(右)武奈ケ岳1.5kmの道標あり。谷沿いの登りとなり,秋気と木漏れ日が疲れる身体を癒し,ハイキングを楽しむ喜びに浸る。 やがて緩やかな登山道,低木帯を登りつめるとやっと眺望開ける稜線の御殿山に立つ。視界が開けた左前方,めざす西南稜と武奈ケ岳の勇姿が望め,疲れも忘れる。その風格は眩いばかりだ。坊村から2時間経過,ガイド通りの順調な登り。此処からは一気の急降下,左右の小枝を掴みながら慎重な足取り,時に背をかがめ低木を潜るとワサビ峠に着く。小休止して怠りなく水の補給。勢いつけ,灌木帯・浸食された溝道・ガレ場の隅に咲くリンドウに目を奪われながら登りつめると,笹原続く西南稜線に出る。西南稜から武奈ケ岳の展望・アプローチ,展開する山容の素晴らしさに魅せられて訪ねるハイカーは多い。左に安曇川の流れを見下ろし,右に堂満岳を眺めながら,短いクマササの広がりとススキ穂のなびく緩やかな美しい尾根を歩く。登山者のみが味わえる至福の時,心満たされる。足取りも軽く,快調なペースでイン谷口方面との合流点を過ぎ,比良山系最高峰の武奈ケ岳の頂上に昼過ぎに着く。(標高1214.4m)山頂からは琵琶湖の大展望,鈴鹿山系や伊吹山,そして遠く御嶽や白山まで望む雄大な景色を満喫できるのだが,今日は生憎と湖面から吹き上げる白いガスが覆い,残念ながら視界は悪く期待外れである。時折,ガスの切れ間から秋光に映える琵琶湖が望め,遥か西南方面の京都北山や丹波の山並みが見渡せるのがせめてもの救いだ。山頂は中高年山仲間パーテイ,家族連れ等の30名程が昼食時で賑わう。記念写真を撮り,風を避け,西側斜面で西南稜を眺めながら昼食とする。眼下は秋色いよいよ深まり満山紅葉とは言い難いが,所々に紅黄葉に色づく木々が点在する。見頃は11月中旬か・・。
タイミングを見計らい下山する。八雲が原を通り,北比良峠の分岐からダケ道を辿り,大山口からイン谷口に向かう下山コースを選び出発する。先ほどの合流点を左に取り,滑りやすく岩が露出した斜面,鎖を伝いながら急勾配の階段が続く登山道を下るとコヤマノ岳との鞍部に着く。中峠・コヤマノ岳からの下山グループや八雲が原からの登山者と何度もすれ違い挨拶を交わす。ぬかるむ道,ザラ石道,荒れた道が続く。急斜面ではトラロープの助けをかり,緊張しながら足元に注意して下る。しばらく行くと沢沿いとなり,木橋を幾度と渡り,柔らかな陽射しを浴びながら,積もる落葉を踏みしめる道を行く。野鳥の鳴き声,せせらぎの心地良い瀬音が生理的にリラックスできる。自然との触れ合いは安らぎと快適感を与えてくれ,心が和む。足元にはタカノツメの黄葉やトチノキの茶色に枯れた大きな掌状の葉が,秋の訪れを知らせる。急降下もあり安定した歩行,より慎重な足取りでイブルキのコバ分岐を通過する。 此処からは谷筋の風化が進み,えぐれた溝道はジグザグな急降下,ぬかるむ斜面が幾度と繰返され,疲れ始めた足腰には負担が掛り,かなり厳しい。急下降では歩幅を狭くして足裏全体で着地する姿勢,慎重な歩行で緊張が続く。やっと解放される平地に入り,しばらく行くと正面谷との合流点である大山口に着く。武奈ケ岳を出発して約3時間の下山であった。正面谷沿いの林道を通り,山桜・楠木・杉の植林された保健保安林の園地を抜け,イン谷口の出合山荘で温かい飲み物を取り小休止。元気を出して比良川に架かる出合橋を渡り,サクラのコバを通り,赤や黄色に色づく草紅葉を眺めながら帰路へ。振り返ると比良山系の奥に鎮座する風格ある武奈ケ岳の雄姿は,此処からは眺めることは出来ない。秋の日はつるべ落とし,比良山麓の秋立つのどかな風情を惜しみながら,PM17.06湖西線比良駅をあとにした。 |